「寝る子は育つ」とのことわざが示すとおり、子どもが日中元気に活動できるようになるためには、夜早く寝て十分な睡眠をとることが必要です。しかし、日本の子どもたちの睡眠時間は近年短くなってきていると言います。その原因となっているのが、共働き世帯が増えたことで、子どもが夜型生活になってしまっていることです。また、核家族化が進み、子どもの寝かしつけ方がわからず困る親が増えたこともあります。
「おやすみロジャー」は寝かしつけの救世主!
子どもが早く寝てくれなくて困っている親にとって、まさに救世主となるのが「おやすみロジャー」という絵本です。この絵本には、子どもを眠りの世界にいざなうための仕掛けが随所に施されていて、読み聞かせをすると最後までたどり着かないうちに眠ってしまう子どもが続出していると言います。
寝かしつけに絶大な威力を発揮する「おやすみロジャー」。この本には一体どのような仕掛けがあるのでしょうか。
眠くなる効果のある言葉をちりばめて眠りを誘う
この絵本の中には、あくびをする、ふーっと息を吐く、というところがあります。これは、「信頼している相手の動作はうつりやすい」との心理学的効果を狙っているものです。また、あえて子どものお名前を物語に登場させることで、その子どもが物語の世界に入りやすくなっています。さらに、「もっともっと」「ゆっくりゆっくり」など、あえて単調な言葉を繰り返すことで眠気を誘う効果もあります。
このように、子どもが眠くなるような効果のある文章やことばが厳選されているため、高い眠りの効果を発揮していると考えられます。
アファメーション効果でより早く眠れるように
「おやすみロジャー」の冒頭には、「今すぐ眠る?お話が終わるころに眠る??」と語りかけるフレーズが出てきます。そのあと「どんどん眠ることがうまくなっていくよ」「明日はもっと早く眠りに落ちるよ」と続きます。
このように、まだ何かを達成していないのにすでに達成したかのような言葉を語りかける方法を、心理学用語で「アファメーション」と言います。この方法は、スポーツ選手や経営者など、多くの成功者も用いているような、自己啓発書で取り上げられることも多い方法です。
医療現場でも使われる自律訓練法の効果も
他にも、物語の途中で登場する「ウトウトフクロウ」が「足首を楽にして」「足ぜんぶを楽にして」と、身体の力を抜くよう語りかけてきます。これは、身体の力を順番に抜くことで全身の力が抜けてリラックスできるような状態になることを狙ったものです。
これは「自律訓練法」と呼ばれる方法で、医療現場でも実際に行われている方法であると言います。この本の中には、心身ともにリラックスすることで、医学的にも心理学的にもよりぐっすり眠れるようになるような仕掛けが隠れているのです。
「おやすみロジャー」は、無理やり寝かしつけられるのではなく、子どもが自分で眠ることを選択して、うまく眠ることのできる習慣を身につけられる本です。このメソッドを小さいうちに身につけておけば、将来大人になったときに「眠れなくて困る」と悩まなくて済むかもしれませんね。
参考文献:
三橋美穂「『おやすみロジャー』の秘密」(『VERY』8月号 2017年、pp.224)